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誰かにとっての地獄、あるいは日常。

2023年12月20日

私はなんで読書するのだろうと思いなおしてみると、登場人物の感情をフィクションとして追体験できることかもしれないと最近思いつつある、N.Yです。
相も変わらず一冊紹介しますので、参考程度に見てみてください。

『愛じゃないならこれは何』斜線堂有紀
発売も読了も2年前近くになるが、最近読んだ小説の中で特に面白かったと感じた本。
この本は5編からなる恋愛短編集で、ホラー要素なんて一切ない。にもかかわらず身震いをするほど、人間の歪んだ愛情を生々しく描いている。
ただの1ファンにストーカーするようになったアイドル、この人と結婚するだろうと思っていたビジネスパートナーの結婚報告に唖然とする天才ファッションデザイナー、想い人に好かれようと趣味も捨て自分を騙す会社員…。
帯には「この恋は、きっと地獄に続いている。」とある。妄信的な彼らが進んだ先に地獄が待っていたとしても、愛と呼べるどうかわからない何かを信じている。そんな彼らに同情しつつ、何かに執着をするということは気を付けるべきと改めて思う。
短編集なので1編は文量も多くない。恋愛感情のグロテスクな部分を見てみたい方はぜひ。

話は変わって。
本を読むときに思うのは、初読する力と再読する力はまったく別物だなと感じることです。
私は一つの本を何度も読みなおすということが無く、読んだ本のざっくりとした感想だけ覚えていて、詳しい描写に関して覚えているということがほとんどありません。
あの本のあの一文が面白かったとすぐさま引用できるとかっこいいなと思いつつ、それを披露することはそうそう無いので、気にせずに私らしく読書を消費していこうと思いました。

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